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水戸家庭裁判所土浦支部 事件番号不詳 決定

少年 S(昭二〇・三・一生)

主文

少年を水戸保護観察所の保護観察に付する。

領置に係る当庁昭和三十七年領第二号の一鞘付果物ナイフ一丁はこれを没取する。

理由

一、罪となるべき事実

少年は

第一、少年Y、H、N、Kと共謀のうえ金員を喝取しようと企て、昭和三十六年七月初旬頃の午後四時頃茨城県新治郡八郷町○○地内常総筑波鉄道株式会社○○営業所前路上において、下校途中の高校生○木○(当十六年)に対し「一寸こう。」と呼びとめて「バス賃貸してくれ」と申し向け、同人に「金は無い」と拒絶されるや「本当にねいのか。」といいながらその上衣ポケットを触り、同人を取り囲み「おみやげ欲しいのか」とすごみをきかせて脅迫して同人を畏怖させ、よつて即時同所において同人から現金百円の交付を受けてこれを喝取した

第二、同年九月中旬の正午頃常磐線石岡駅便所において高校生○根○、大○○夫、○谷正○の姿を認めて金員を喝取しようと企て

(1)  先づ同所において右○根に対しその後方から首に腕をまきつける等の暴行を加えながら「ものは相談だが金はあるか」と申し向けて脅迫して金員を要求しよつて同人を畏怖させたが同人に拒絶されたためその目的を遂げなかつた

(2)  続いて前同所附近である石岡市○○町△△乳業株式会社集乳所前路上において前記○根を待ち受けていた前記大○及び○谷に対し何で逃げたと脅迫しつつ大○の右股あたりを蹴り更に同人等に「金を貸せ」と要求したが同人等に拒絶されたため喝取の目的を遂げなかつた

第三、同年十月中頃の午後三時過ぎ頃、石岡駅構内において前記○根に対し「金を貸せ」と申し向け「ない」と断わられるや「あつたら取つちやうぞ」「あしたの午後四時までに金をつくつて此処に持つて来い」と脅迫し金員を喝取しようとしたが同人に逃走されたため目的を遂げなかつた

第四、同月十九日午前八時四十分頃常磐線羽鳥駅から石岡駅に進行中の列車内において○井○助(当十六年)から金員を喝取しようと企て同人に対し「金を貸せ」と申し向けたが「ないよ」と断わられ喝取の目的を遂げなかつたが、その断わり方に憤慨し「何だその口のきき方は」と因縁をつけ手拳で同人の顔面を殴打し更に同人を足蹴にする等の暴行を加え、よつて同人に対し全治まで十日間を要する右頬部打撲症、下唇部擦過創口腔粘膜挫創の傷害を与え

第五、W(当十七年)と共謀のうえ、同年十二月十日午後四時過頃石岡市○○町××の○○稲荷神社内において、高校生○崎○(当十九年)に対し「ちよつとこう」といいながら同人を同神社裏に連れ込み手拳で同人の顔面を数回殴打し

第六、上記犯行に引続き、上記暴行により○崎が畏怖しているのに乗じて同人から金員を喝取しようと企て、同所において、「百円あるか」と申し向けて金員を要求したが上記Wに制止されたためその目的を遂げなかつた

第七、Yと共謀のうえ、同月十四日午後七時過ぎ頃石岡市○町「△△」洋品店前路上において同所を通りかかつた○場○夫(当十七年)に対し「ちよつとこつちえ来い」「来られないのか」等と申し向けながら所携の果物ナイフをその面前にちらつかせて脅迫したうえ附近路地に連れ込み、同所において同人を膝で蹴り上げ或いは手拳でその顔面を殴打する等の暴行を加え

第八、昭和三十七年一月七日午後五時頃石岡駅構内において高校生○崎○(当十八年)に対し些細なことに因縁をつけたうえ手拳でその顔面・腹部等を数回殴打する等の暴行を加え

第九、同月十二日午前十時五十分頃その友人Aと共に石岡市○○町××番地先路上を通りかかつた際、同人の友人○島○忠(当十六年)が右Aに対し「何学校さぼつてぶらぶらしてるんだ」等と冗談をいうやこれに立腹し、同所附近の稲荷神社裏の空地に連れ込み、同所において矢庭に所携の果物ナイフ(刃渡約八・二糎昭和三十七年押第二号の一)を以て同人の腹部めがけて突き刺しよつて同人に対し全治まで約十日間を要する右上腹部刺創兼大網膜脱出の傷害を与え

たものである。

二、適用した法令

第一事実 刑法第二四九条第一項第六〇条

第二、第三、第六事実 刑法第二四九条第一項第二五〇条

第四事実 刑法第二四九条第一項第二五〇条第二〇四条

第五、第八事実 刑法第二〇八条(内第五事実については刑法第六〇条)

第七事実 刑法第二〇八条第二二二条第一項第六〇条

第九事実 刑法第二〇四条

少年法第二四条第一項第一号

同法第二四条の二第一項第二号第二項本文

(裁判官 長崎裕次)

別紙一

原審決定(水戸家裁土浦支部昭三七・二・一四決定)

主文

少年を中等少年院に送致する。

領置にかかる果物ナイフ(鞘付)(押収番号昭和三十七年押第二号の一)はこれを没取する。

理由

(非行事実)

少年は

(1) 少年Y、H、N、Kと共謀のうえ金員を喝取しようと企て、昭和三十六年七月初旬頃の午後四時頃茨城県新治郡八郷町○○地内常総筑波鉄道株式会社○○営業所前路上において、下校途中の高校生○木○(当一六年)に対し「一寸こう。」と呼びとめて「バス賃貸してくれ」と申し向け、同人に「金は無い」と拒絶されるや「本当にねいのか。」と云いながらその上衣ポケットを触り同人を取り囲み「おみやげ欲しいのか」と凄みをきかせて脅迫して同人を畏怖させ、よつて即時同所において同人から現金百円の交付を受けてこれを喝取した。

(2) 同年九月中旬の正午頃常盤線石岡駅便所において高校生○根○、大○○夫、○谷正○の姿を認めて金員を喝取しようと企て

(イ) 先づ同所において右○根に対しその後方から首に腕をまきつける等の暴行を加えながら「ものは相談だが金はあるか」と申し向けて脅迫して金員を要求しよつて同人を畏怖させたが同人に拒絶されたためその目的を遂げなかつた。

(ロ) 続いて前同所附近である石岡市○○町△△乳業株式会社集乳所前路上において前記○根を待ち受けていた前記大○及び○谷に対し「何で逃げた」と脅迫しつつ大○の右股あたりを蹴り更に同人等に「金を貸せ」と要求したが同人等に拒絶されたため喝取目的を遂げなかつた。

(3) 同年十月中頃の午後三時過ぎ頃、石岡駅構内において前記○根に対し「金を貸せ」と申し向け「ない」と断わられるや「あつたら取つちやうぞ」「あしたの午後四時までに金をつくつて此処に持つて来い」と脅迫し金員を喝取しようとしたが同人に逃走されたため目的を遂げなかつた

(4) 同月十九日午前八時四〇分頃常盤線羽鳥駅から石岡駅に進行中の列車内において○井○助(当十六年)から金員を喝取しようと企て同人に対し「金を貸せ」と申し向けたが「ないよ」と断わられ喝取の目的を遂げなかつたが、その断わり方に憤慨し「何だその口のきき方は」と因縁をつけ手拳で同人の顔面を殴打し更に同人を足蹴にする等の暴行を加えよつて同人に対し全治まで一〇日間を要する右頬部打撲症、下唇部擦過創、左眼瞼部擦過創口腔粘膜部挫創の傷害を与え

(5) W(当十七年)と共謀のうえ、同年十二月十日午後四時過頃石岡市○○町××の○○稲荷神社内において、高校生○崎○(当十九年)に対し「ちよつとこう」と云いながら同人を同神社裏に連れ込み手拳で同人の顏面を数回殴打し

(6) 上記犯行に引続き、上記暴行により○崎が畏怖しているのに乗じて同人から金員を喝取しようと企て、同所において、「百円あるか」と申し向けて金員を要求したが上記Wに制止されたためその目的を遂げなかつた

(7) Yと共謀のうえ、同月十四日午後七時過ぎ頃石岡市○町「△△」洋品店前路上において同所を通りかかつた○場○夫(当十七年)に対し「ちよつとこつちえ来い」「来られないのか」等と申し向けながら所携の果物ナイフをその面前にちらつかせて脅迫したうえ附近路地に連れ込み、同所において同人を膝で蹴り上げ或いは手拳でその顔面を殴打する等の暴行を加え

(8) 昭和三十七年一月七日午後五時頃石岡駅構内において高校生○崎○(当十八年)に対し些細なことに因縁をつけたうえ手拳でその顔面・腹部等を数回殴打する等の暴行を加え

(9) 同月十二日午前十時五十分頃その友人Aと共に石岡市○○町××番地先路上を通りかかつた際、同人の友人○島○忠(当十六年)が右Aに対し「何学校さぼつてぶらぶらしてるんだ」等と冗談を云うやこれに立腹し、同所附近の稲荷神社裏の空地に連れ込み、同所において矢庭に所携の果物ナイフ(刃渡約八・二糎昭和三七年押第二号の一)を以て同人の腹部めがけて突き刺しよつて同人に対し全治まで約十日間を要する右上腹部刺創兼大網膜脱出の傷害を与え

たものである。

(法律の適用)

恐喝につき刑法第二四九条第一項同未遂については更に同法第二五〇条傷害につき同法第二〇四条暴行につき同法第二〇八条脅迫につき第二二二条第一項共謀の点について同法第六〇条中等少年院送致について少年法第二四条第一項第三号、没取について同法第二四条の二第一項第二号第二項を各適用

(処分決定につき考慮した事情)

少年は国鉄職員を父として中流の家庭に育ち、昭和三十五年四月私立○○第一商業高校に入学したがその頃より石岡市の不良少年等の間で勢力を有する本件共犯者Y(当十七年)の勢力を背景に石岡市内で顔を売るべく積極的に同人と交際する様になり、その後間もなく同人と共謀のうえ、取手高校生に対する恐喝未遂事件(本件外)をおこすに至り、昭和三十六年四月頃以降は学習意欲も乏しくなり怠学して石岡市内を不良徒輩と共に徘徊すること多く、その間に不良グループとの結合は益々密となり、同年七月以降本件非行を反覆累行したものであるが、かかる非行はその激情的な気短かな性格を強い基盤として居り又その不良化は単なる不良感染によるものではなく少年自身の性格を基礎として積極的に不良化したものと認められ、しかもその上調子な外向的性格のためその非行についての反省は殆ど行われているものとは認められず一方その父母は昭和三十六年九月頃より少年の不良化に気づきながら何等適切な指導をもなさず、不良化の進行するにまかせていたものと考えられその保護能力は期待できず、結局上記諸事情並びに本件非行の犯情を考慮し、少年に対しては収容保護により強い心的ショックを与えて矯正を計る以外適切な処分方法は存しないものと判断し主文のとおり決定する。

(裁判官 龍岡稔)

別紙二

抗告審の決定(東京高裁刑五部 昭三七・五・九決定)

主文

原決定を取り消す。

本件を水戸家庭裁判所土浦支部に差し戻す。

理由

本件抗告の理由は、末尾添付の附添人弁護士坂吉兵衛作成名義の抗告理由書及び抗告理由追加申立と題する書面記載のとおりであつて、当裁判所のこれに対する判断は次のとおりである。

先ず所論の原決定には少年に対する弁護人または附添人の選任について、決定に影響を及ぼす法令の違反があり、ひいては本件非行事実の認定について一部重大な事実の誤認がある旨の主張については、少年調査記録を含む一件記録を調査しても未だ原決定に所論のような違法の廉があることを発見し得ない。従つてこの点の主張は理由がない。

次ぎに原審が少年を中等少年院に送致する決定をしたことの当否について審究するに、少年の本件非行は恐喝、同未遂、傷害、脅迫、暴行等合計十件に上り、その動機、罪質、熊様及び少年の性格、交友関係に鑑み、少年が相当要保護性の強いものであることはこれを是認するに足る。しかし右各非行による被害者の大部分との間に既に示談が成立していること、少年は現在ではその非を悟り自己の性格上の欠点を深く反省していること、将来は父親の後を継いで国鉄職員として身を立てることを希望し少年の右希望が達せられる目途がない訳ではないこと。更に、少年の父親は現在国鉄○○駅の助役として勤務しており、母親は前に小学校の教員をした経歴を有し、少年の実兄二人は現在それぞれ社会人として独立して生計を営んでいる実情にあつて少年の家庭環境は寧ろ良好であること、少年の身内の者達が少年の今後の監督、補導につき十分責任を負うことを誓約していること及び少年の年齢、学歴等に想いを至すと未だ曾て保護処分を受けたことのない少年を今直ちに中等少年院に送致するより、一応少年を両親の手許において保護観察所の保護観察に付し少年に対する保護善導の実を挙げることが最も適切な処置と考える。さすれば少年を中等少年院に送致する決定をした原決定は、その処分が著しく不当なものといわなければならないから、少年法第三三条第二項、少年審判規則第五〇条に則り原決定を取り消し、本件を水戸家庭裁判所土浦支部に差し戻すべきものとする。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判長判事 小林健治 判事 松本勝夫 判事 太田夏生)

別紙三

抗告申立

少年 S

右水戸家庭裁判所土浦支部傷害保護事件につき昭和三十七年四月十四日同庁において少年院に送致する決定を受けたが右決定に対し不服につき抗告する。 (少年法第三二条)

昭和三十七年二月二十六日

右法定代理人父 T

同母 M子

東京高等裁判所 御中

別紙四

抗告理由書

少年 S

右傷害保護事件につき抗告理由を左の通り陳述する。

昭和三十七年二月二十六日

右附添人弁護士

坂吉兵衛

東京高等裁判所 御中

第一点原決定は決定に影響を及ぼす法令の違反、重大なる事実の誤認又は処分の著しい不当があるから之を取消さねばならない。

其詳細は追加陳述する。

別紙五

抗告理由追加申立

少年 S

右傷害等保護事件につき抗告理由を左の通り追加致します。

昭和三十七年三月二日

右附添人弁護士

坂吉兵衛

東京高等裁判所御中

一、本件少年事件として石岡警察署長より水戸地方検察庁に対し送致されたのは昭和二十七年一月十三日傷害事件であり同月二十日傷害脅迫暴行恐喝同未遂事件であり少年Sの昭和二十七年一月十三日検察官中本広三郎に対する弁解録取書によれば同人は弁護人を選任することが出来る旨を告げられたこと同日裁判官君和田保蔵より弁護人を選任することができる旨告げられたと被疑者陳述調書に記載されているが事実同人は弁護人の選任とは如何なることか事理が不明であつた、勿論審判開始迄に附添人として弁護士を選任することも何等此点について告知されず、全く不明であつたので弁護士と打合せ充分なる防禦も出来なかつたのである。従つて犯罪事実の一部について供述中否認されていても、審判の際は全部自白しているのである。現在少年について調査するに、犯罪事実中は身に覚えのないことがあると称し、執行中の多摩少年院に申出で再審判方を申出でたので親権者が同所に参り抗告手続を採つたのである。

二、弁護人の選任乃至附添人の選任は、憲法上基本的人権を護る大切なる事項であり少年事件についても右基本的人権の保障、刑事訴訟法乃至刑事規則は当然準用されなければならない然るに、本件においては弁護士の選任については特と考慮されたとは考えられない。

三、因て決定に影響を及ぼす法令の違反重大なる事実の誤認があつたと見ることが妥当であると信ずる。

四、少年は記録と学問は余り好ない状況に在つたが目下進学の途上にあり、学校においては退学処分をせず本人と親権者の自由意思に委せてあるのである。

五、保護事件の重要なる実体については、石岡市市会議員前野某其他の有志によつて円満に示談されている少年も、少年院に送致さるるや翻然として改悔し進学を希望して居り、再び斯かる事件は起さず真面目に進学延いては就職の意欲がある、若し其儘少年院において観護さるるにおいては退院後における統計上の欠陥があつて、一生希望が持てなくなるようでは由々敷問題と思料するので此儘執行を続行せず自宅における保護観察に附し通学出来ることが無難と思料致します此意味において原決定は処分が著しい不当であると思料するのであります、何卒少年に対し希望を持たせられ度い加護あらんことを伏して懇願し抗告理由を陳述する次第であります。

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